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森のパン屋さんのお話

ある森の深くには、小さな小さなパン屋さんがありました。そこでは、一羽の小鳥さんがパンを作っていて、森の動物たちは、売られているパンを買っていました。しかし、パンはあまり売れず、小鳥さんはとても困っていました。店は休みがちになり、小鳥さんも、店を畳もうとしているところでした。そんなとき、パン屋にやってきた一匹の大きなオカピが言いました。もっと売れるためには、もっと頑張ってみるのがいいんじゃないかなあ。そう言われた小鳥さんは、その言葉を信じ、その日の夜遅くまで、色々な種類のパンを作りました。今までより多くのパンをお店に並べてみたのです。するとどうでしょう、こんな斬新なパンは初めて食べたわ! うん、これは不思議な味で形も不揃いだけどふわふわして美味しいぞ! と、多くの人が喜びました。そして小鳥さんは気付いたのです。今までのパンは、美味しいパンを作ることに固執しすぎて、パンを焼きすぎていたのだと。今までのパンは生地がカチカチになるまで焼いてしまっていたのだと。もちろん、種類が増えた分、一つ一つのパンが売れる数は減りました。経営も楽になったわけではありません。味だって、美味しいパンばかりではありませんでした。それは、美味しいパンを作りたいと思う小鳥さんにとって、本当に悔しいことでした。恥ずかしくて泣きたいと思うこともありました。ですが、それでも小鳥さんは幸せでした。なぜなら、買う人それぞれが好きなパンを見つけることができ、そして、小鳥さんはその人たちに感謝されたからです。僕にとってこのパンはおいしいよ、ありがとう! と言ってくれる人が増えたのです。小鳥さんはその喜びを糧にして、新しいパンを作ることができました。そして、その後しばらくは、お店が畳まれることはありませんでした。私たちはこう信じるのです。焼きすぎたパンも良いけれど、ふかふかのパンも美味しいのだと。たくさんの種類のパンを作る方が、私たちはとても楽しいと。誰よりも美味しいパンを作れなくても、別によいのだと。