AgX, Filmic, Standard の比較
カメラの HDR 撮影というは要するに、暗いところが明るくなって、明るいところが暗くなるということである。
さて、Blender においては、Emitter を配置して良い感じの strength にすると、Emitter からカメラへの直接光が明るくなりすぎてしまい、PNG 出力すると #FFFFFF になってしまうという問題があった(と勝手に思っている)。それの何が問題かというと、今までは基本的にはレンダーレイヤーを分けて PNG 出力したものを After Effects で合成するなどしてグロー効果を付けていたのだが、色が #FFFFFF になってしまうとグローを掛けても綺麗にならない。そこで、Blender 内の Compositing だけでなんとか対処できないかと思って色々試していたところ Color Management を AgX にすることによって上手く対処できて、カメラへの直接光が #FFFFFF にならないということが分かった。
また、そもそも Blender の Compositor でグローを掛けると、輝度値が Clamp される前の値に対して処理をすることができるため、After Effects でグローを掛けるよりも簡単に良いグローを得ることができるというという気付きも得られた。
原色の光源
さらに言うと、モーショングラフィックスなどにおいて、グローを掛ける際に、光源の中心に近い部分を敢えて白飛びさせると美しいというのがある。
しかし、Emitter の color の R、G、B の全ての成分が非ゼロでないと、どんなに強度を上げても、どんなに加算で合成しても、白飛びしないというのが過去の常識だった。ゼロに何を掛けてもゼロにしかならないからである。このため、原色を使わずに、光源の saturation を 1.0 から少し下げるというのが(自分の中での)常套手段だった。しかし、 AgX ではそのようなことをしなくともいい感じのレンダリング結果になることが分かった。以下は光源に赤、緑、青の原色を使用した例である。
AgX のデメリット
その代わり AgX では鮮やかさが少し下がってしまったので、派手なモーショングラフィックス作品を作りたい場合は、彩度を上げる調整が compositing で必要になるかもしれない。
また、そもそもトゥーンシェーディングには適していないので、必要に応じて AgX から別の設定に変更するのを忘れないようにすること。
まとめ
- 光源を直接見るようなダイナミックレンジの大きいシーンにおいて AgX は効果的
- AgX を使用すると光源に原色を使用しても破綻しづらい
- AgX は彩度が下がるため、ポストプロセスでの調整が必要になる可能性がある
- AgX はトゥーンシェーディングには適していないので、必要に応じて AgX から別の設定に変更するのを忘れないようにする
- そもそも、PNG 形式で出力する前に Blender 内でグロー効果を掛けるとメリットがある
付録:Compositor ノード
余談 : 32bit OpenEXR
以前は Sheep it Render Farm では OpenEXR 出力ができなかったような気がするのだが、今見たら対応しているらしいので、輝度値を Clamp したくないのであれば OpenEXR を使う手段もあるかもしれない。